RED SKY <著者:亜梨馬サマ>
真っ赤な太陽に染まる空をぼぉっと、見つめていた。
ふとうつむき、足元に転がっている石ころを軽く蹴飛ばしてみる。
コロコロと小さな音を立てて小石は短く転がり、それを目で追いかけてみた。
そして・・・小さなため息を1つつき、また空を見上げている。
携帯の着信メロディーが梅流の耳に入ってきた。表示された名前を見て
急いで電話にでた。
「もしも・・・」
言い終わらぬうちに、彼の声が聞こえてきた。
「梅流!ごめん、オレの大事な友達が大変なことになってて
そっちに行けそうにないんだ!!」
またか・・・、そう思いつつも言葉には出さなかった。
いつものことだ、彼はその「大事な友達」のことになると
人が変わったようになってしまう。めったに約束を破ることのない彼が
「大事な友達」のこととなると、例えずっと前から約束していていたことでも
すっぽかしてしまう。
(・・・バカ・・・)
心の中でそっと呟き、口からでてしまいそうな「その言葉」を必死に飲み込んだ。
しかし、彼にはそのことがバレている。いや、わかっていた。
「梅流、彼らは・・・オレにとって本当に大切な存在なんだ。でも、彼らに会いに
行くたびに・・・君を傷つけてしまう。君もオレにとって大切なヒトなのに・・・・・」
少しくもった彼の声に、梅流は胸が熱くなった。彼の今の思いが、梅流の胸にも
流れてきたから。辛く、せつない思いが・・・。しかし梅流の心の中には
それとは別の、優しく、温かい思いもあった。
まるで、彼の腕の中にいるかのような・・・。彼の温かな気持ちが梅流を包み込む。
気付くと視界は涙で霞んでいた。声を出そうとしても声にならない。
不思議な気持ちが、梅流の心を埋め尽くしていて、うまく言葉を発することが出来ない。
「・・・秀くん・・」
彼の顔が空に浮かび、やっと言えた彼の名前に涙はとめどなく流れてくる。
それを感じ取った彼は、優しく、ささやくように言った。
「梅流・・・愛してる・・・」
空はまだ真っ赤に染まっていた。遠くには満月がのぞいている。
「また、電話するよ。必ず!!」
「・・うん・・」
最後に一呼吸おいて、彼・・・蔵馬こと南野秀一は優しく梅流を包んであげるように言った。
「大好きだよ。それじゃぁ、また後でね」
梅流は再び赤い空を見上げた。
「秀君、あたしも秀君のこと・・大好き!!!」
そう空に向かって呟き、軽い足取りでその場を去った。
会うことができなくても2人の心はつながっている、だから寂しがることはない。
彼はそれを教えてくれた。
「今日の埋め合わせ、何にしようかな?!」
自然と顔がほころんでくる。思うだけで幸せになれる、考えるだけで楽しくなる。
空は、ゆっくりと闇に包まれ始めている。少しだけ残っていた夕焼けを見て
梅流は立ち止まった。晴れ晴れとした梅流の心に、赤い夕焼けは彼の姿を思わせる。
空の闇には、星たちが輝きはじめていた。
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