♪music on / off → music by "夢幻のオルゴール工房"



ハロウィン <著者:綾子サマ>

俺達が住む町では毎年ハロウィンに仮装コンクールをしている。
今年、俺は梅流を誘って出てみる事にした。

「恥ずかしいよう…蔵馬ぁ…」
「大丈夫。かわいいよ梅流。」
「そんな事言っても恥ずかしいのには変わりない!」

梅流は俺の隣で少し顔を赤らめながら歩いていた。
梅流は今魔女の格好をしている。
いつもにも増して、かわいく感じるのは俺が今吸血鬼の
格好をしているから、心までそうなってしまったのか?
それとも、彼女に心の底から惚れてしまったからなのか?たぶん…

「どうしたの蔵馬?」
「ん?梅流があまりにもかわいいから見とれてた…」
「またそんな事言って!!」

彼女は真っ赤になった。この反応が見たくて俺もついこう言う事を
言ってしまう…幽助達に知れたらきっと驚くだろうな…
 
「うわぁ!綺麗!!」

俺と梅流は銀杏並木にさしかかった。
そこはうっすらと紅葉し始めて、辺りが黄色い世界だった。
…確かに綺麗だ…梅流が思わず声を上げたのも納得がいく…

「綺麗だね蔵馬!」
「ああ…ちょっとゆっくり歩いて行こうか?」
「うん!」

もう時間がギリギリなのは知っていたが、俺は梅流は
ゆっくりと銀杏並木を歩く事にした。

「すごい…きれぇ…」
「ここはクリスマスになると、この木一本一本に電灯がつけられるんだよ?」
「すごい!梅流見た事ないよ!」
「じゃあ、今年のクリスマスはここで過ごそうか?」
「うん!」

俺達は先の事を話しながら先に進んで行った。
その時、突然雨が降り始めた。

「え?雨!」
「このままじゃ濡れちゃうな…木の下なら少しは雨が防げるかも…
 雨宿りしていこう!」

俺は梅流の手をひいて、大きな銀杏の木の下に避難した。

「…今日のコンクール中止かな?」
「そうかもね…」
「残念だなぁ…」
「俺は少しほっとしたよ?」
「なんで?」
「梅流を俺だけの魔女にできたからね。」
「そんな事言っても,血はあげませんからね吸血鬼さん!」

梅流は赤くなりながらそう言った。
まったく…この子はどうしてこんなにかわいいのだろう?
つい抱きしめたくなってしまう気持ちを抑えるのに俺は心の中で葛藤をしていた。
それから俺達は取り留めのない話しをしながらかなりの時間を過ごしていた。

「止まないね…雨…」
「ああ…でも、今濡れると風邪をひく…もう少し待ってみよう。」
「うん。」

雨のせいか、気温がさっきよりも一段と冷え込んでいた。
梅流…風邪ひかないといいが…

「…クシュンッ!」
「寒いか梅流?」

梅流が小さくくしゃみをした。

「ううん大丈夫だよ。」

梅流はそう言うが、小さく震えている様に見える…
このままじゃ風邪をひきかねないな…

「梅流…おいで…」

俺は梅流の後ろに回ると、衣装で着ていたマントの中に梅流をいれ
背中から抱きしめた。

「蔵馬っ//////!」
「暖かいだろ?」
「大丈夫だって!!誰かに見られたら…//////!」
「大丈夫だよ…この雨の中わざわざこの銀杏並木を歩く人なんていないよ…」
「でも!!」

寒いはずなのに、梅流の体は温かかった…いや、熱かったと言うべきかもな…
しばらく梅流を抱きしめていると、彼女は静かになった。

「梅流?」
「え?」
「寒いか?」
「ううん…暖かい…」

梅流はやっと体の力を抜いた。

「俺が本当に吸血鬼だったら、このまま梅流の血を吸っているかもな…」
「蔵馬にだったら血を吸われてもいいよ…」

俺が彼女の耳元で囁くと、梅流は耳まで赤くなりながら微笑んでそう答えた。

「ねぇ蔵馬…来年はコンクールでようね…?」
「ああ…またこの格好でね…」

俺達はそのまま言葉少なくじっと雨を見ていた。
しばらくすると、辺りはすっかりと闇に包まれていた。
その頃には雨も止んでいた。

「帰ろうか蔵馬!」
「そうだね…」

俺は梅流を体から離すと、梅流の少し後ろを歩いた。
梅流はあんなにも細かったのか…俺が少し力を入れると
折れてしまうくらいだった…

「蔵馬!見て星!!」

梅流は空を仰いで叫んだ。
本当だ…綺麗な星が黒い雲の間から顔を出している…

「明日晴れるかな?」
「どうだろうね…晴れるといいな・・・」
「うん!」

梅流は綺麗な笑顔をしていた。
梅流…俺は君をずっと守っていく…ずっと…

「ね?梅流?」
「え?なに?」
「いや…何でも無い…早く帰ってなにか暖かい物でも飲もう。」
「うん!」

俺はこれからもっと強くなる…梅流とこの幸せを守るために…
 
 

後日談…(笑)

「飛影っ!こっちに来ていたのか!」
「ああ…おい蔵馬…」
「どうした?」
「…雨の日にわざわざ俺の休んでいる木の下で女と
 抱き合う事もないだろう…」
「…え?飛影…?ま・・・さか…」
「…うるさい…」
「いた…のかお前…//////?!」
「…お前も一応人間の男だったんだな…(二ヤリ)」
「飛影!!」

ばっちりと飛影に全てを目撃され、珍しくも飛影に
からかわれる蔵馬でした(笑)。




 


Copyright (C) KOHAKU All Rights Reserved