ENDLESS LOVE <著者:綾子サマ>「蔵馬!蔵馬!!しっかりして蔵馬!!お願い目を覚まして!!いやぁぁぁ!!!」 …俺は梅流の泣き叫ぶ声を聞きながら闇へと落ちて行った。 ある夜、俺は梅流を誘って星を見に出かけた。 その日は空が澄んでいて、夜空を隠すほどの満天の星空だった。 「すご〜い!綺麗だね蔵馬!!」 「ああ。ここは誰も知らないところだからね…」 俺と梅流は寄り添って座って星を眺めていた。 「梅流…また…ここで会おう…何十年も… 何百年経ってもここで…二人っきりで会おう。」 「うん…絶対に会おうね…たとえ生まれ変わっても…あ、でも生まれ 変わったら記憶が無くなっちゃうかな…?」 「大丈夫だよ…俺と梅流の愛は絶対に消えたりしない…」 その後だった…俺が梅流の叫び声を聞くのは… 帰り道、歩道を歩いていた俺達の後ろから、一台の車が猛スピードで走ってきた。 いきなりの事で、俺は梅流を庇う事が精一杯でその車にはねられてしまった。 そして…不覚にも頭を打ってしまった… 「蔵馬ぁぁ!!」 …俺は…死ぬのか? 目が覚めるとそこは見知らぬ部屋だった。 薬飲匂いがする…ここは病院か?しかし、なぜ病院に…? 俺は一体何をしているんだ? あれ?俺は…どうしてここにいるんだ? 頭が重い…俺は…誰なんだ?俺が体を起すと、そこには一人の少女がいた。 「蔵馬!!よかった!!目が覚めたんだね!!」 少女がうれしそうに涙を浮かべている…この子は一体… 「…?」 「どうしたの蔵馬?大丈夫?」 「…君は…誰?」 「…え?」 いっきにその少女の顔に絶望の色が走った。 俺はなぜかその顔を見るのが嫌だった。 心がしめつけられる…そんな顔…しないでくれ… 「蔵馬?どうしたの蔵馬!」 「蔵馬?蔵馬って?俺は…誰なんだ?」 「う…そ…嘘でしょ!!」 「…すまない…思い出せないんだ…」 少女の目から涙がこぼれた。 …止めてくれ…君が泣く姿なんか見たくない… 「…泣か…ないで…」 「でも…でも…梅流のせいだよ…梅流があの時しっかりしてれば 蔵馬は…ごめんね蔵馬!!」 少女は俺に抱きついて泣いた…しばらくして、一度泣き止んだ 彼女が先生を呼びに行った。 先生や看護婦さんがきて、俺にいろいろと質問をしていった。 「君は誰だ?」「この子の名前は?」「君の家族は?」等と… どれも分からない…俺の方が教えて欲しいくらいだ…誰か教えてくれ… 「私は…梅流。あなたは…南野秀一。」 「梅流…南野…秀一?」 「そう。」 少女がやさしく俺に教えてくれた。 俺の名前は秀一…南野秀一…だけど、なぜかさっき彼女が言った 『蔵馬』という名の方が俺は懐かしい気がした。 「すまない…なにも覚えてない…」 「大丈夫だよ!これからゆっくりと思い出せば… いつも梅流が蔵馬…ううん秀一に守られてばっかりだから 今度は梅流が守ってあげる!!」 「ありがとう…梅流ちゃん…」 「やだなぁ!梅流!ちゃんはいらないの!いい?」 「ああ、分かったよ梅流。」 俺が苦笑しながら彼女を呼ぶと、彼女はすごくうれしそうな顔をした。 その顔に俺の鼓動は高鳴った。 俺は…この笑顔が好き…なのか?俺は…梅流が… 「どうしたの?」 「いや、なんでも無いよ。」 しばらくして俺は退院を許された。 事故に遭ったらしい俺は、頭を強打しただけで、外傷は無かったそうだ。 頭を強打した事で一時的に記憶が無くなった…先生はそう言った。 俺の家に帰ると、家族が待っていた。母さんに父さん…それに弟… 懐かしい気がするが…思い出す事は無理だった。 部屋に案内され、俺は部屋のベットで横になっていた。 懐かしい気はするんだ…その時窓から少年が入ってきた。 「君は…?!なぜそんな所から?」 「何を言っている?ふざけているのか?」 「ふざけてはいないよ…君は一体誰なんだ?」 「いい加減にしろ蔵馬!なんの冗談だ!」 まただ…彼も俺を蔵馬を呼んだ… やはり蔵馬の方がなにかを思い出しそうなんだ… その時、同じく窓から少女が入ってきた。 「蔵馬!あんた大丈夫なのかい!!」 「すまないが…君達はどうして窓から入ってくるんだ?」 「え?えっと〜…それより、事故に遭ったって…もう退院していいのかい?」 「事故?なんの事だ?」 「おや?知らなかったのかい飛影?蔵馬、車にひかれたんだよ!」 「…貴様…まさか、それで…」 「どうしたんだい飛影?」 「…記憶喪失…そうだな?」 少年が俺を見据えた。 「…ああ。なにも覚えてないんだ…」 「え〜〜〜!嘘だろ蔵馬!!本当になにも覚えてないのかい!!」 「ああ…」 「…そ、そうかい…じゃ、じゃあ自己紹介をしようね! あたしはぼたん。霊界案内人のぼたんちゃんで〜す! で、こっちが飛影。あんたのパートナーみたいなもんだよ。」 「勝手にパートナーにするな!」 「いいじゃないか本当の事だろ?あ、そうだ! こうなったら幽助達も連れてくるよ!!ちょっと待っててね!!」 ぼたんは再び窓から飛んで行った。 …彼女は一体…霊界案内人?それは一体なんなんだ? 「すまないが一つ聞きたいんだ…」 「なんだ?」 「…蔵馬とは一体なんなんだ?」 「?お前の名前だろう…」 「俺の名前?俺は南野秀一ではないのか?」 「…人間界での名前はそうだ。お前は妖怪…妖孤蔵馬が南野秀一の体に融合し 今のお前…南野秀一でもあり、蔵馬でもあるお前になったんだ。」 「蔵馬…俺は皆にそう呼ばれているのか?」 「…仲間にはな…」 俺が妖怪…でも、俺はなぜか落ち着いてその事を聞けた。 それに、仲間…俺には仲間がいるのか? しばらくして、ぼたんが二人の少年を連れてきた。 「おい!!まじかよ蔵馬!!」 「君は…誰だ?」 「…ゲッ…マジっぽい…俺は浦飯幽助だよ!覚えてねぇのか?」 「すまない幽助君…」 「なんだよ水臭ぇなぁ!君なんてつけんなよ!!」 幽助は腕を俺の首に回した。 そんな些細な事だったが、俺にはとても懐かしく感じられた。 「俺は桑原和真だ。」 「桑原君…」 「おぅ!ったくらしくねぇなぁ蔵馬! お前が事故るなんて思ってもみなかったぜ…」 「そうだよな…でも、怪我は無かったんだろ?」 「ああ…どうやら頭を打ったらしくって、それで記憶が…」 「おそらく一緒にいた梅流を庇ったんだろ?それで技が使えなかったか…」 飛影が梅流の名前を出した。 梅流…そう言えば、彼女はいまどこに…俺は無性に彼女に会いたくなった。 「どうしたんだい?どこか体の具合が悪いのかい蔵馬?」 「え?あ、いやなんでもないんだぼたん…俺は大丈夫だ…」 「そろそろ帰るか…蔵馬もきっとつかれてるだろうからな… おい蔵馬!記憶戻ったら連絡しろよ?」 「俺にもな蔵馬!記憶戻ったら皆でパーッと騒ごうぜ!!」 「…ありがとう幽助、桑原君…」 「じゃな!おい!行くぞぼたん!!」 「まったく人使いが荒いんだから!!二人を乗せて飛ぶの大変なんだよ!!」 「人使いの荒いのはお前等だろ!お前とコエンマは いきなり過ぎるんだっつ〜の!」 「まぁまぁ浦飯…ぼたんちゃんだってコエンマに こき使われてんだぜ?なぁぼたんちゃん?」 「さすが桑ちゃん!言い事言うねぇ…」 「だろ?」 そんな会話をしながら彼等は消えていった。 「…じゃあな…」 「あ、飛影…」 「なんだ?」 「…彼等が俺の仲間…なのか?」 「他に誰がいるというんだ俺達の仲間に?」 飛影は少し赤くなりながらそう言って窓から出て行った。 梅流…今どこに? 俺は夕焼けの中を走った。 梅流を探して…俺は足の向くまま走った。すると、公園があった。 俺は公園に入った。そこには、俺が探していた梅流の姿があった。 彼女は悲しそうにうつむいてベンチに座っていた。 「梅流!」 「…え?蔵馬!!」 俺は彼女に近づくと、思わず梅流を抱きしめた。 「ど、どうしたの?」 「…分からない…分からないんだ…ただ…君に会いたくて… 君が側にいないと不安で仕方ないんだ…」 俺は心の中に渦巻く気持を梅流にぶつけた。 俺は…俺は梅流が好きなんだ… そんな俺の気持を梅流は黙って聞いていた。 「大丈夫だよ…梅流はいつも側にいるよ…ね?」 梅流は俺の体から離れると、笑顔でそう言った。 「…さっき俺の仲間達が来てくれたんだ…」 「仲間達?あ、幽助達?」 俺達はベンチで話していた。 「ああ…はじめは飛影とぼたんが…その後にぼたんが幽助と 桑原君を連れてきた…彼等と会うととても懐かしい気持ちになるんだ…」 俺は心の中にあるものを全て梅流にぶつけた。 梅流はそんな俺をやさしく見守って、そして俺の気持を全て受けとめてくれた。 「そっか…何か思い出せそう?」 「…いや…まだなにも…ただ…」 「ただ?」 俺は梅流の目を見つめた。梅流の澄んだ綺麗な瞳が俺を見つめ返す… 「いや、なんでも無い…」 「え?なんで!何でもいいから思い出した事言ってよ!!」 「それじゃあ…」 「…え?!」 俺は梅流の腕を引っ張ると、彼女を強く抱きしめて、そして耳元でささやいた。 「俺は君が好きだ。…それは思い出せた…いや、違う… 改めて好きになったんだ…俺は君が好きだ…何度記憶を無くしても 君を何度でも好きになる…その想いは思い出せたよ…梅流…」 「蔵馬…」 梅流は泣いているようだった。 俺はなだめる様に俺の胸に顔をうずめた彼女の頭を撫でていた。 俺は彼女を連れて部屋に戻った。母さん達に見つかる訳には いかなかったから、窓から入った。 そして、夜…俺と梅流は寄り添って眠っていた。 「ごめん梅流…」 「どうして謝るの?」 「…悲しい想いをさせてる…君の悲しそうな顔を見たくないのに… 俺が悲しい顔の原因を作ってる…」 「そんな事無い…大丈夫だよ!」 俺はふと窓の外を見た。綺麗な星空が広がっていた。 「梅流…見て星が綺麗だよ?」 「え?あ、本当だ…あの日の夜みたい…」 「あの日の夜?あぁ…俺が記憶を無くした日か…」 「うん…梅流と蔵馬は星を見に行ってたんだよ…」 「…それで俺は事故に遭って…」 「…でも、蔵馬無事でよかった…どこも怪我してなくて本当によかった…」 「ああ…」 「あ!流れ星!!」 「ああ…」 「見た?蔵馬?」 「もちろん…梅流…願い事した?」 「…間に合わなかった…」 「そっか…でも、今からでもお星様が願いをかなえてくれるかもしれないよ?」 「そっか…じゃあお願いしよう…」 梅流が目を瞑ってなにかを願っている。 俺はそんな彼女を見て、心から彼女と二度と離れたくないと思った。 「お願いした梅流?」 「うん。蔵馬は?」 「ああ。お願いしたよ…」 「…叶うといいね…」 「ああ…きっと叶うよ…いや、叶えてみせる…」 「そうだね。」 「梅流は何をお願いしたんだ?」 「…蔵馬が元に戻ってずっと梅流の側にいてくれますようにって…蔵馬は?」 「…梅流と二度と離れませんようにってだよ…」 「そっか!」 彼女はうれしそうに笑った。 しばらく星を見ていた俺達だったが、何時の間にか梅流は寝息を立てていた。 「もう寝てしまったのか?」 俺は梅流の顔を静かに見つめた。 どんな夢を見ているんだろう? 梅流…こんなに側にいるのに、なぜか遠くに感じるんだ… 離れたくない…離したくない… 俺は二度と君を悲しませないそう誓い俺は梅流のまぶたに口付けた。 そして…俺は君をずっと愛し続けるよ… そう誓うと俺は綺麗な梅流の唇に口付けた。 「俺はこれから旅に出る…俺自身を探す旅に…だけど、梅流… これだけは信じて…どんな姿になっても…どんな事が起きても 俺は君を愛してる…だから…待っていてくれ…梅流。」 そう呟くと、俺は彼女を腕に抱きながら眠りについた。 次の朝、俺は目を覚ました。 腕の中にいる梅流を見て俺はすべてを思い出した。 あの日の夜の事も、昨日までの事も… 「ぅ…ん…」 梅流が小さく声を漏らし、ゆっくりと目を開けた。 「…蔵…馬?」 「おはよう梅流…ただいま。」 「蔵馬!!思い出したの!!」 「ああ。君のおかげだよ。」 「よかった!!」 梅流は嬉し涙を流しながら俺に抱きついた。 暖かい…やっと帰って来れた… 「ごめん梅流…いっぱい泣かせてしまった…」 「いいの…いいの蔵馬!だけど…もう梅流を独りぼっちにしないで! 置いて行かないでよ!!」 「ああ…もう絶対に離れないよ梅流…だから、ずっと俺の側にいてくれ梅流…」 「うん…絶対に離れない…」 俺達はそう永遠の愛を誓って口付けを交わした。 君への愛…永遠だよ…LOVE FOREVER… |