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好きだから <著者:那波梨芳サン>


心地良い日差しがさす昼下がり。
こんな日はつい昼寝をしてしまう。

蔵馬だって例外ではない。

いつものように、窓際にある自分の机に肘を付きながら
ひとり安らかな睡眠を楽しんでいた。

そんな時、梅流が蔵馬の家にやって来た。
ドアを開けると、蔵馬がうたた寝をしている事に気付きそっと彼に近づいた。

「蔵馬……??」
小さな声で、そっと彼を呼んでみるが返事はない。

どうやら熟睡中のようだ。

彼のこんな寝顔を見るのは初めてな梅流。
端整な顔立ち、すっと閉じられた瞳。
そんな彼の寝顔はどこか幼いように見える。

「こんな顔もするんだね」

クスクスと笑いながら蔵馬のサラサラの髪を指先で玩ぶ。
フッと梅流が蔵馬に近づいた。

そうして髪に軽くキスをする。

お日様のいい香りがした。
それにしてもよく寝ているようで全然起きる様子がない。


「…………」

そういえば最近気になることがあった。

梅流は少しほっぺたを膨らませてポツリと呟いた。

「最近…蔵馬、冷たいよね。
 …………嫌われちゃったの……かなぁ??」

そう、最近の蔵馬はどこかそっけない。

梅流に対して冷たいような気がする。
そんな事がずっと続いて少し梅流は寂しかったのだ。


「……寂しいよぉ」

そう言ってまた蔵馬の髪をいじる梅流。

すぅ…と蔵馬の手が伸びた事に気がついていない。
蔵馬の手が梅流の腰にそっと添えられて、彼女をグイッと抱き寄せる。

ボフン、と蔵馬の胸に頭が埋まるかたちとなってしまった。

「・・!?蔵馬、お、起きて……んっ!!」

有無を言わさず唇を塞ぐ。

いやがるかと思いきや、梅流はただギュッと蔵馬のシャツを
握っていただけでいやがるような素振りはない。

久しぶりのキスだったので嬉しかったのだ。

「ん……はぁ…ぅん……」

吐息が漏れるのも許そうとせず、蔵馬は深く唇を塞ぐ。

やっと蔵馬が離れたころには梅流の息は少しあがっていた。

「嫌がんないんだね♪」
「だっ……だって……」
一気に顔が赤くなった梅流をみて楽しそうに微笑う蔵馬。

自分の腕の中の彼女の耳元でささやいた。

「ずっと冷たくて寂しかった?」


「……うん。」

いつもなら『そんな事ないもん!』とか言って本心でないことを言って後悔する。
しかし今日は違った。

予想外の梅流の返答に戸惑う蔵馬。
梅流のほうはと言うと蔵馬の背中に腕を回して抱きついて…

甘えてくる。

「だって、蔵馬近頃『好きだよ』とか言ってくれないんだもん・・
 だから、梅流のことホントは嫌いなんじゃないかって思って。
 だから最近冷たいんじゃないかって……」


そんな考えに行きつくとは思いもしなかった。
別に最近冷たくした覚えもなかったのだが、
どうやら梅流にとっては冷たくされたようで寂しかったらしい。

「…ごめんね。別に、冷たくした気はないんだ。それに、言っちゃうと…」

そこで顔を赤くして梅流から顔をそらす。
きょとんとした様子で、少し目尻に涙を溜めて梅流は蔵馬を見上げる。

そんな顔は反則だ。

「言っちゃうと……??」

「………歯止めがきかなくなりそうで……怖いんだ。」

梅流を傷つけてしまいそうで。

ギュ、と腕の中の梅流を抱きしめた。
梅流は嬉しそうにエへへ、と笑って蔵馬を抱きしめ返した。

「大丈夫だよ、蔵馬。だって蔵馬優しいもん。」
「梅流…………好きだよ。」

恥ずかしそうに、梅流の耳元でそっと呟いた。



スッと蔵馬の唇が梅流の首筋に移動した。

そんな彼の行動に体が強張ってしまう梅流。
強張っている梅流を安心させるように優しい声で蔵馬は囁いた。

「大丈夫だよ?……優しくするし…痛くしないから。」

「・・・!?あっ…蔵馬、もうかえらなきゃ…ね??」
時計を見て慌てて蔵馬を止めようとする。

しかし……

「今日はうちに泊まっていきなよ。寂しかったんでしょ?
 可愛がってあげるから・・」

「ふぇ?……んっ……」
初めのキスで抵抗する力がなくなってしまった梅流。

自分の膝の上に座らせていた梅流を机の上に抱き上げ、
だんだんと露になっていく肌に口付けていく。
抵抗する力のない梅流は、なすがままだ。

貪欲に蔵馬を求める梅流と、同じように彼女を求める彼。


お互いの体温が伝わりあい心地良い反面、頭がおかしくなりそうで………。


「梅流………」





ふと目が覚めた時にはもう朝で小鳥がチチチ、と鳴いているのが微かに聞こえた。

んん、と伸びをして自分がなにも着ていないことに気がつき
慌ててシーツを手に取る。

そうして混乱した頭で昨日の出来事を思い返す。

その証拠とでも言うかのように身体中に残った刻印。

「……おはよう梅流。」
「!!お、おはよう…蔵馬……」

恥ずかしさのせいか顔が赤くて、蔵馬の顔がまともに見れなかった。

「そう言えば言ってない事があったんだ。」
「え、なに……?」
クス、と笑って蔵馬は梅流の肩に手を添えて呟いた。


「愛してる。」






 


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