夕暮れ教室 <著者:要桜羅サマ>放課後、夕日で教室がオレンジ色に染まる時間帯。 「南野君〜っ!」 広い教室、帰り支度をしている南野秀一。 「だぁ〜れだっ?」 後ろから声をかけられ、振向こうとしたその時 手で目を覆い隠されてしまった。 「だれだぁ〜?」 しきりに後ろからやってきたコはそう問う。 くすりと南野は、そっと口元を綻ばせた。 「さて、一体誰なんでしょうか…。うぅ〜ん…難しいですネェ」 南野は楽しそうにそう言うと、目隠しをされたまま考え始めた。 「うぅ〜ん…そうですねぇ〜…」 本当に悩んでるようだ。 「ぅ〜ん…………どうでしょう・・。あ!〜いや、でもなァ…う〜ん…」 「………もぅいいよっ」 目隠しをしたコはぽそっと言って、諦めて手の覆いを外そうとした。 「わかってるよ」 と南野は言って、まだ右目の上にある手を左手で優しく掴む。 そしてそのまま振向き 「――梅流…っ」 と呟くと己の唇と『そのコ』の唇を合わせた。 1瞬の間を置いて、瞑っていた目を開き、そのコを確認する。そして 「ほら…やっぱり梅流だ」 と微笑んだ。 「………っ///」 そこに居たのは、間違い無く、顔を赤く染めた1番いとおしい恋人(ひと)。 「迎えに来てくれたの?」 「…うん」 「嬉しいな。じゃあ、帰ろっか」 「…うんっ!」 そのコの頬を染めた明るい笑顔に微笑を返して その手を繋いだまま、夕焼けの空の下へと赴いた。 優しいオレンジの色彩の中で、そのコ、いとおしく想う………。 *帰り道にて* 「それにしてもさぁ、秀ちゃん。あんな事して、もし私じゃなかったらどうするの?」 「…間違えるわけ無いじゃないですか。俺は声だけで、梅流だって分かるんですから」 |