幸せは自分で掴むもの <著者:璃尾サマ> とある春の午後。 梅流と蔵馬は二人で散歩に出た。 天気もよく、ぽかぽかと温かいので、時々道端で眠ってしまいそうにもなった。 「蔵馬〜。お日様、あったかいね〜」 「そうだね。もっと日があたる所へ行こうか」 「うん!」 そういいながら、二人が訪れたのは、とある広場。 こんなにいい天気だというのに、あまり人は見当たらない。 多分、連休続きなので、遠出している人が多いのだろう。 「広いね〜。気持ちいいね〜……あっ!」 何かを見つけたらしく、たっと走り出す梅流。 と、ある場所で立ち止まり、その場にしゃがみ込んだ。 蔵馬は、不思議そうに梅流に追いつくと、梅流の肩を叩いた。 「梅流?どうしたの?」 「見て見て蔵馬!ほら!」 パッと蔵馬の方へ差し出したのは……四つ葉のクローバーだった。 「四つ葉のクローバー見つけたら、願い事が叶うんだよね。幸運のクローバーだもん♪」 嬉しそうに微笑む梅流。 その無邪気な笑顔をしばらく眺めていた蔵馬だったが、突然吹き出した。 「くっくっ…あはは!」 「蔵馬?」 いきなり蔵馬が笑い出したのだから、梅流がきょとんっとするのも無理はない。 しかし、蔵馬はずっと笑ったままだった。お腹をかかえて…かなり楽しそうに。 「もう、蔵馬!何笑ってるの〜?ちゃんと言ってよー!」 「あはは…いや、ゴメン。君は本当に可愛いね、梅流」 「えっ?」 全然答えになっていない蔵馬の返事。 梅流はもう頭の中が「???」でいっぱいになってしまっていた。 蔵馬はそんな梅流すら、可愛いらしく、ぽんっと梅流の頭に手を置くと、 「梅流。何故、通常三つ葉なはずのクローバーが四つ葉になるのか知ってる?」 「え?理由があるの!?」 「ああ。それも、とびっきり夢のないね」 そう言うと、蔵馬はその場に屈んだ。 足下は当然ながら、たくさんのクローバーが咲き乱れている。 蔵馬はその中の一つ、まだ成長しきっていない小さなクローバーを指差しながら言った。 「まだ若いクローバーの先端の…ほらここの部分。成長点っていうんだけど、ここを刺激するとね。 突然変異を起こして四つ葉になるんだよ。つまり四つ葉のクローバーは偶然出来るものじゃなくて、いわば人工的に作られる葉なわけ。 多分、ここらへんに少し前、誰かが来たんだろうね。それで上手い具合に成長点を踏んずけたんだよ、きっと」 「え〜!?そうだったの〜!?」 心底がっかりする梅流。 幸運の象徴だと思っていたクローバーが、実はちゃんと生物学的に証明できるものだったなんて……。 しかもそんな夢の欠片すらないものだったなんて……。 ず〜んっと落ち込む梅流。 あまりのショックにその場に座り込んでしまった。 「梅流…」 ふいに蔵馬の手が梅流の頬に優しく触れた。 梅流は恥ずかしそうに顔をそむけたが、蔵馬は気にせず、くすっと笑って言った。 「幸せっていうのはね。自分でつかむものなんだよ。何かを見つけたから幸せになれるとか ずっと信じていたり願っていたりすれば手に入るとか、そんなじゃない。自分で努力してこそ手に入るんだよ」 「……蔵馬。そうだね。きっとそうだよね!」 蔵馬の言葉に元気づけられ、笑顔が戻った梅流。 蔵馬はその満点の笑みに少し顔を赤らめながら、 「それで?梅流はどんな願い事しようとしていたのさ」 「……蔵馬の…」 「え?何?」 「ううん!何でもないの!!さっ!行こう!」 そう言って、クローバーの広場を駆けていく梅流。 蔵馬も紅い髪を靡かせながら、その後を追った……。 まだ言えない…… 今はまだ…… でも、幸せは自分でつかむもの…… いつか必ず、つかんでみせるからね 最高の「幸せ」 蔵馬と一緒に…ね…… |