目覚め
〜prologue〜
千年の時を経て
ふたりは静かに目を覚ます
「狐白」 「狐鈴」
名前を呼ぶ声に
ゆっくりとその瞳を開く
ぼやけた視線の先に映るのは
白狐と銀狐の妖狐の姿
「狐鈴・・?」
「狐白・・」
ふたりは顔を見合わせ
同じ表情で瞬いた
「おはよう」
白狐の女性が
ふたりに向かって
ニッコリと微笑んだ
「目は覚めたか」
銀狐の男性が
細い眼差しで
ふたりを見つめた
「ゆ、夢・・・・じゃないよね、狐鈴?」
「うん、夢じゃないよ狐白」
確かめるようにちいさな手を握り合う
話にしか聞いたことが無かった
写真で見た事も無かった
会った事も無い
記憶にない姿なのに
それが
誰だか わかる
「ずっと、あなたたちを待っていたのよ」
白狐の女性は両腕を広げ
ふたりにそっと手を伸ばす
「お父さん!」 「お母さん!」
初めて産声をあげた
あの日のように
声にならない声をあげながら
ふたりは白狐の母の胸に飛び込んだ
「すまなかったな」
銀狐の父がふたりの頭に手を乗せる
触れられた手が優しくて
抱き締められた胸が温かくて
涙が止まらなかった
ずっと
ずっと
感じたかった
ずっと
会いたかったんだよ
"お父さん" "お母さん"
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