桜舞〜予感の舞〜
桜の華が、膨らむ。
もうすぐ、花開く。
すべての生命たちの期待。
桜舞の開幕が、近づく…。
2
「桜…咲きそう」
少女がそっと呟く。
それは、とてもとても小さかったけれど<蔵馬>は逃さなかった。
「そうだね。もうすぐ…だね」
自分に背を向け、桜のほうばかり見ている<梅流>に言う。
そのままそっと、その小さい背中に近づく。
後ろから、かるく抱きしめる。
静かなときが訪れる。
桜だけが、それを見ている。…知っている。
自分より華奢で脆弱な…小さい身体。
それを、こわれないように、そっと自分に抱きよせる少年と
その少年の温もりや優しさを
じっと感じている少女の事を………。
桜だけが…見ている。…知っている。
木漏れ日の下。
サワサワと木が揺れる。
その風が、2人の髪を攫ってゆく。
消え入ってしまいそうな…空気に溶けていってしまう様な…
そんな感覚が
2人を襲う………。
桜の花弁が,パラりとほころぶ。
なにかを、あざ笑うかのように・・・・・・。
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