桜舞〜魅惑の舞〜
桜舞の開演が近づく。
すべての生命たちが、それを待ち焦がれる。
疼きだす。 どこか落ち着かなくなる。
それは、あの舞に魅入られている証拠。
それは、もう逃れられない証拠。
3
桜の蕾は少なくなり
木々の枝枝には、薄紅の花弁が広がっていた。
「桜、綺麗に咲いたね。蔵馬の言った通り」
少女はそう言う。少年はそれを嬉しそうに聞いている。
「だろ? おれの言うことは正しいんだ」
「年の功?」
「………;」
「あはは」
<蔵馬>は、<梅流>の笑顔には弱いらしく、苦笑いをこぼす。
「今度、お花見行こうね」
「お花見?」
「うん! 桜いっぱいある所で」
家のすぐ隣にも桜の木があって
2人とも毎日それを見ているのだが どうやら、まだたりないらしい。
「そうだね。いいスポットを探さなきゃな」
<蔵馬>は言う。今度はそれを<梅流>が眺める。
この2人も魅入られる…
桜舞に魅入られる………
もうすぐ開幕、桜舞。
すべての生命が、開演を待つ……。
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